ホテル業界は、多様な運営形態が存在する業界です。オーナーがホテルの所有と運営を一手に行う従来型のほか、フランチャイズ方式やマネジメントコントラクト(MC)方式など、様々な選択肢があります。

近年、ホテルオーナーからの注目が高まっているのが、MCです。オーナーとオペレーターの役割が明確に分かれるため、お互いの専門性を最大限に活かすことができます。また、世界的に知名度の高いホテルブランドを導入しやすく、効率的な運営が期待できるメリットがあります。

今回は、ホテル業界における新たな選択肢として注目されているMCについてこちらの記事で紹介させていただきます。

【MC(マネジメントコントラクト)とは?】

マネジメントコントラクト(MC)とは、ホテルの所有者(オーナー)と運営者(オペレーター)が別会社となり、オーナーが施設を所有し、オペレーターが運営を受託する契約形態です。オーナーはホテルの建設や改装費用を負担し、オペレーターは専門的な経営ノウハウを活かしてホテル運営を行います。

MCの特徴は、オーナーとオペレーターの役割分担が明確になる点です。オペレーターは所定の手数料を受け取る代わりに、マーケティングからスタッフ教育、施設管理までホテル運営全般を担います。契約期間は通常10年から30年程度とされています。

【ホテル運営におけるMCのメリット】

オーナー側のメリット

・ホテル経営のリスクをオペレーターと分散できる
オーナーは施設の所有者に特化できるため、経営リスクが分散される
・世界的な知名度があるホテルブランドを導入しやすい
オペレーターの国際ブランドを活用でき、集客力の向上が期待できる
・オペレーターの専門知識と実績を活用できる
マーケティング、人材教育、施設管理など専門的なノウハウを活用可能

運営会社側のメリット

・ブランド力を広く展開できる
資金負担なしで自社ブランドを展開でき、ブランド価値の向上につながる
・安定した収益源を確保できる
手数料収入が長期的に見込めるため、安定した収益が得られる
・新規出店リスクを低減できる
施設投資コストがかからないため、新規出店のリスクが抑えられる

【ホテル運営におけるMCのデメリット】

オーナー側のデメリット

・オペレーターによる経営方針変更でコントロール権を失うリスク
契約期間中は経営権がオペレーターに移るため、オーナーの意向が反映されにくくなる恐れがある
・オペレーターへの手数料負担が発生
売上高の一定割合をオペレーター報酬として支払う必要があり、コスト負担が重くなる
・経営がブラックボックス化し、透明性が失われる可能性
オペレーターの経営内容を把握しづらく、不透明な部分が生じるリスクがある

運営会社側のデメリット

・契約上の制約により経営の自由度が低くなる
オーナーの意向を尊重しなければならず、自社の経営方針を完全に反映できない
・利益分配ルールで十分な利益を得られない可能性
一定の利益配分ルールが設定されており、想定以上の利益を得ることが難しい場合もある
・長期契約のため、環境変化への機動的な対応が難しい
10年以上の長期契約が一般的で、市場環境の変化に機動的に対応しづらい

【MC契約の成功事例】

【国内事例】
東急株式会社とホテルオーナーの相鉄グループが2016年に東横インホテル品川駅高輪口をオープンさせました。この案件では、ホテル用地と資金を相鉄グループが用意し、東急がホテル運営のノウハウを提供するというMC方式が採用されました。東急の優れたホテル運営力と、相鉄グループの立地選定力が組み合わされ、高収益の確保につながりました。

【海外事例】
シンガポールの運営会社ミレニアム&コプソーン・ホテルズがイギリスのホテルグループミレニアム・ホテルズとMCを締結しました。これにより、ミレニアム・ホテルズのブランド価値を生かしつつ、ミレニアム&コプソーンの運営力も発揮できるようになりました。その結果、ブランド力と運営力を掛け合わせることで、欧州市場におけるミレニアムホテルズの収益が大幅に向上しました。

成功のポイントは、オーナーとオペレーターの強みを最大限に活かしつつ、緊密なコミュニケーションをとり、お互いの利害を尊重したパートナーシップを構築した点にあります。

【MC契約を結ぶ際のポイント】

オーナー側は、質の高い運営ノウハウを持つオペレーターを選定する必要があります。また、手数料などの契約条件をしっかりと交渉する必要があります。

オペレーター側は、長期的な視点でパートナーシップを重視する姿勢が求められます。オーナーの経営方針を尊重しつつ、自社のブランド価値を高める運営を心がける必要があります。

【まとめ】

MCは、ホテル業界において比較的新しい運営形態ですが、オーナーとオペレーターの強みを組み合わせることで、双方にメリットをもたらす可能性があります。しかしながらリスクもあり、お互いのパートナーシップを大切にしながら、長期的な視点で契約関係を構築することが重要でしょう。

ホテル経営を検討する際は、MCの特徴とメリット・デメリットを十分に理解し、自社にとって最適な運営形態を選択することをおすすめします。当社ではMCの相談から宿泊施設の経営コンサルティングまで幅広く相談を受け付けておりますのでお気軽にご相談くださいませ。

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