「集客を外に頼みたいが、どこに何をいくらで頼めばいいのか分からない」
「見積もりを3社から取ったが、書いてあることがバラバラで比べられない」
「前に頼んだところは、契約が終わったら何も残らなかった」

宿泊施設のオーナー・支配人の方から、支援会社選びについてこうしたご相談をいただきます。難しさの理由ははっきりしていて、この業界の支援サービスは「範囲」も「課金の仕方」も会社ごとに違い、料金表を公開している会社がほとんどないからです。同じ「集客支援」という言葉でも、中身は広告の運用代行だけのこともあれば、予約エンジンの選定から料金設計まで含むこともあります。

そこで本記事では、金額の相場を当てにいくのではなく、「任せる範囲を切る → 課金の型を見分ける → 自施設の数字で妥当性を判定する」という順番で整理します。この順番で進めると、料金表がなくても比較ができるようになります。

Dot Homesは、ホテル・旅館・グランピング施設を中心に200施設以上の集客支援を行ってきました。自社でもグランピング施設を運営しているため、依頼する側とされる側の両方の立場を知っています。その前提で、契約前に見るべきところを率直に書きます。

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この記事の監修者

留田 紫雲

株式会社Dot Homes 代表取締役

留田 紫雲

サイバーエージェント、ABEJAでWebメディア運営とデジタルマーケティングに従事後、2015年に大学在学中でDot Homesを創業。2023年に西武ホールディングス傘下入りし、グループ最年少の子会社社長に就任。宿泊施設・スキー場など150以上のリゾートを支援。

まず決めるのは金額ではなく「任せる範囲」

打ち合わせで資料を確認する担当者

支援会社選びでつまずく一番の理由は、範囲を決めないまま見積もりを取りにいくことです。範囲が違えば金額が違うのは当たり前なので、そのまま並べても比較になりません。まず自施設が何を手放したいのかを決めてください。

宿泊施設の支援サービス4類型と、それぞれ社内に残る仕事
支援の4類型。範囲を先に切ると、料金表がなくても比較できる

宿泊業の支援サービスは、実務上おおむね次の4つに分かれます。

型任せる範囲向いている施設社内に残る仕事
運営委託(オペレーションごと)予約管理・料金設定・現場オペレーション・スタッフ管理まで一括人が採れない、オーナーが本業を別に持っている方針の決裁と数字の確認
集客代行OTA運用・広告・SNS・自社サイト経由の予約獲得現場は回るが、予約が積み上がらない料金設定、現場の受け入れ
スポットコンサル診断・戦略設計・改善提案。実行は自社社内に手は足りているが、判断の軸がない実行のすべて
システム導入支援PMS・予約エンジン・サイトコントローラーの選定と初期設定仕組みが古く、手作業が多い日々の運用

この4つは排他ではなく、組み合わせて契約することもできます。ただし「全部お任せ」で始めると、どこが効いたのか分からないまま費用だけが続くことになりがちです。最初は範囲を絞って、効果が読めてから広げるほうが安全です。

費用は「金額」ではなく「課金の型」で見る

電卓と請求書

料金表が公開されていない以上、「相場はいくらか」を調べても答えは出ません。代わりに見るべきは課金の型です。型が分かれば、自施設の数字を入れたときに年間いくらになるかを自分で計算できます。

宿泊施設の支援会社の課金の型5種類と注意点の比較表
課金の型が分かれば、自施設の数字を入れて年間総額を出せる
課金の型費用が動く要因依頼側にとっての注意点
月額固定作業範囲と工数閑散期も同額。稼働が落ちる月ほど重く感じる
成果報酬獲得した予約数・売上「成果」の定義次第。何をもって成果とするかを契約書で特定する
売上歩合(運営委託に多い)施設の総売上売上が伸びるほど支払いも伸びる。利益ベースで見ないと判断を誤る
スポット(一括)成果物の量納品後の運用は含まれないことが多い
初期費用+月額初期構築の重さ初期費用の中身(何が資産として残るか)を確認する

見積もりを受け取ったら、金額の前に「これはどの型ですか」「うちの数字を入れると年間いくらになりますか」と聞いてください。答えられない、あるいは条件によって大きく振れる説明しか返ってこない場合は、その時点で判断材料が足りていません。

なお、成果報酬型は一見リスクが低く見えますが、成果の定義が曖昧だと「OTA経由の予約も成果に含める」といった解釈が生まれます。すでに入っていたはずの予約に手数料を払うことになりかねないので、ここは必ず文字にしておいてください。

妥当かどうかを判定する2つのものさし

ノートパソコンに表示された成長グラフ

支援費用が高いか安いかは、単体では決まりません。自施設の数字と並べて初めて判定できます。実務で使えるものさしは2つです。

1予約あたりの獲得コストとOTA手数料の総額で支援費用の妥当性を判定する図
支援費用が妥当かを測る2つのものさし

ものさし①|1予約あたりの獲得コスト

支援費用を、その支援で増えた予約数で割ります。宿泊業の広告では、1予約あたりの獲得コストは平均で1万円弱というのが当社が見てきた水準です(広告予算は月50万円程度から始める施設が多くを占めます)。支援費用を乗せた結果、獲得コストが平均単価に対して見合わない水準まで上がるなら、その施策は続きません。

注意したいのは、直予約にもコストがかかるという当たり前の事実です。仮に直予約1件の獲得に3,000円かかっていて、平均単価2万円・OTA手数料10%なら、OTA経由の手数料は1件2,000円。この場合、直予約のほうが割高という結論すらあり得ます。「OTAより安いはずだ」という思い込みで判断しないでください。

ものさし②|OTAに払っている手数料の総額

直予約の強化を目的に支援を頼むなら、支払える上限は「OTA手数料をどれだけ減らせるか」で決まります。国内OTAの基本手数料率は8%〜10%、海外OTAは12%〜15%が一般的で、事前決済手数料やポイント負担、掲載順位を上げるプログラムを足すと実効手数料率が20%を超えることもあります。

支援に投資できる年間予算を計算する

OTA経由の年商に加重平均の手数料率(例:10%)を掛けると、年間の手数料額が出ます。直予約比率を10ポイント動かせたときに手元に残る金額が、そのまま支援に投資できる上限の目安です。

月商 OTA経由(60%と仮定) 年間手数料(10%換算) 直予約を10pt動かすと残る額
300万円180万円216万円年間36万円
500万円300万円360万円年間60万円
1,000万円600万円720万円年間120万円
2,000万円1,200万円1,440万円年間240万円

※OTA比率と手数料率は施設ごとに異なります。自施設の実数に置き換えて計算してください。

契約前に確認する12項目

契約書にサインする手元

トラブルになるのは、たいてい「言った・言わない」ではなく「そもそも決めていなかった」ことです。以下の12項目は、提案を受けた段階で書面に落としておくべきものです。3つのグループに分けてあります。

成果物と範囲(4項目)
  • 毎月の納品物は何か(レポートの項目まで具体的に)
  • 実行するのはどちらか。「提案まで」なのか「入稿・設定まで」なのか
  • OTAの管理画面・広告アカウント・GBP(Googleビジネスプロフィール)に誰がログインするのか
  • 写真・原稿・バナーの制作は含まれるのか、別費用か
お金と期間(4項目)
  • 課金の型と、自施設の数字を入れたときの年間総額
  • 広告費は支援費用に含まれるのか、実費として別に払うのか
  • 最低契約期間と、途中解約したときの扱い
  • 成果報酬の場合、「成果」の定義(OTA経由の予約を含むのか、キャンセル分は差し引くのか)
引き継ぎとデータ(4項目)
  • 契約終了時に、広告アカウント・サイト・予約データは自社に残るのか
  • 制作物(サイト・写真・原稿)の権利はどちらに帰属するのか
  • 顧客データ(メールアドレス・宿泊履歴)の保有者は誰か
  • 担当者が替わったときの引き継ぎ体制

とくに最後のグループは軽視されがちですが、ここを詰めていないと、契約が終わった瞬間に振り出しに戻ります。広告アカウントが支援会社名義のままで過去データを引き継げなかった、サイトが支援会社のサーバーにあって移せなかった、という話は珍しくありません。

よくある失敗3つ

頭を抱えるビジネスパーソン

1. 集客だけ頼んで、受け皿がないまま流し込む

広告やSNSで人を集めても、自社サイトに予約エンジンが入っていなかったり、スマートフォンで予約が完了しなかったりすれば、費用は流れ落ちるだけです。集客を頼む前に、直予約の受け皿が機能しているかを確認してください。順序を逆にすると、支援費用の大半が無駄になります。

2. 数字の定義を合わせないまま始める

「直予約が増えました」という報告を受けても、電話予約を含むのか、キャンセル分を引いているのか、リピーターの再訪を新規に数えていないかで、意味はまったく変わります。開始前に、稼働率・ADR・RevPAR・直予約比率の4つについて、誰がどのデータをもとに、いつ集計するかを合わせておいてください。

3. 現場の負荷を見積もらずに契約する

支援を入れると現場が楽になる、とは限りません。新しいプランを作れば説明が要り、SNSを回せば写真が要り、レポート会議には人が出ます。月にどれだけ現場の時間を使うのかを事前に見積もっておかないと、忙しい時期に止まります。止まった施策は成果が出ないまま費用だけが残ります。

自社でやるか、任せるか

ホワイトボードの前で議論するチーム

すべてを外に出す必要はありません。判断の目安は「習熟が資産になるか」「頻度が高いか」の2軸です。

領域自社向き/外注向き理由
料金設定・在庫調整自社(助言だけ外部)毎日動く。判断のスピードが落ちると機会損失に直結する
写真・動画の撮影外注頻度が低く、品質差が大きい
広告運用外注→将来的に内製化も可専門性が高い。ただしアカウントは自社名義で持つ
SNSの日々の投稿自社(設計だけ外部)現場の空気が写る。外注だと素材待ちで止まる
クチコミ返信自社(テンプレは外部)個別性が高い。返信の質がそのまま評価に出る
システム選定・初期設定外注一度きり。失敗したときの損失が大きく、やり直しにも費用がかかる

相談前にそろえておくと話が早い5つの数字

電卓と資料で数字を確認する手元

どの支援会社に相談するにしても、次の5つが手元にあると初回の打ち合わせで具体的な話まで進みます。逆にこれがないと、1回目は現状把握で終わります。

  1. 直近12か月の月別売上と稼働率
  2. チャネル別の売上構成(OTA各社/自社サイト/電話・直接/法人・団体)
  3. OTAごとの実効手数料率(基本料率+事前決済+ポイント負担+各種プログラム)
  4. ADR(客室平均単価)と、繁忙期・閑散期それぞれの数字
  5. いま使っているシステム(PMS・予約エンジン・サイトコントローラー)の名称と契約期間

3番のOTAごとの実効手数料率は、明細を見ないと出てきません。基本料率だけで話していると、実際の負担を1割ほど低く見積もったまま議論することになります。

よくある質問

小規模な施設でも支援を頼む意味はありますか

あります。ただし範囲を絞ってください。棟数が少ない施設は、そもそも動かせる売上の絶対額が小さいため、フルパッケージだと費用に対して効果が見合いません。「システムの選定だけ」「初期の料金設計だけ」といったスポットから始めて、投資できる幅が広がってから範囲を広げるのが現実的です。

効果が出るまでどのくらいかかりますか

施策によって差があります。広告やOTAの掲載調整は数週間で数字が動きますが、自社サイトの検索経由の集客やSNSからの指名予約は、積み上がるまでに数か月から1年単位を見ておく必要があります。契約時に「何か月目に何を見て判断するか」を決めておくと、途中で不安になったときに立ち戻れます。

複数社に分けて頼むのはどうですか

領域が明確に分かれているなら問題ありません(例:広告はA社、システム導入はB社)。ただし料金設定と在庫調整に複数社が関わると、指示が競合して現場が混乱します。料金と在庫については、決裁する人を1人に決めてください。

まとめ

ホテルのロビー

支援会社選びは、料金表を比べる作業ではありません。任せる範囲を自分で切り、課金の型を見分け、自施設の数字で妥当性を判定する。この3つができれば、料金が公開されていなくても比較はできます。

そして契約前に、成果物・お金・引き継ぎの12項目を書面にしてください。とくに引き継ぎの4項目は、契約が終わったあとに効いてきます。ここを詰めておけば、仮に相性が合わなかったとしても、積み上げたものは自社に残ります。

宿泊施設の集客を、まず現状から整理したい方へ

Dot Homesでは、200施設以上の支援実績をもとに、チャネル構成の見直しから直予約の強化までを一貫してご支援しています。「どこから手をつけるべきか」を知りたい段階でも構いません。

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